金駿眉ができるまで 製茶から偽物の解説まで | 茶の穂

金駿眉ができるまで 製茶から偽物の解説まで

正山小種・桐木紅茶

中国紅茶を代表する高級品であり正山小種紅茶の最高級品でもある金駿眉(きんしゅんび)この茶について、そんな金駿眉の事情と価格、歴史さらに製茶について解説するページ。

金駿眉について

金駿眉は2005年に正山堂の創業者である江元勳氏とその開発チームにより生み出された紅茶である。それは桐木関周辺の茶樹から単芽(一芯)のみを使用した正山小種紅茶であり、もともとは上記メーカーのオリジナル商品であったが、次世代の紅茶として桐木関を中心に作られるようになった。さらに雰囲気の似た単芽を使用した紅茶が中国で流行、当時の中国は商標を守ろうという意識は薄く金駿眉を冠した為に金駿眉の名前は広まり現在に至る。

金駿眉の偽物が多い理由

上記の経緯から中国国内や日本においても単芽を使用した紅茶を金駿眉と冠して販売され愛好家が良く目にする銘柄となった。もともと正山堂の最高級正山小種紅茶であった、愛好家の間においても正山小種紅茶の最高級品であるという認識が何かと共有されており、生産量の限られた桐木関の紅茶でありながら町中で目にすることには疑問を感じるところ。普通に目にする金駿眉は主に雲南省や桐木関周辺の外山小種や標高の低い地域の茶樹から採集された、単芽を原料とした紅茶とそれらのブレンドであると考えられ、それらは味は良いが高級品のコクは無いので、偽物の多い茶として悪名高くなってしまったと考えられる。ちなみにそれらの価格は安く偽物というより価格相応な中国産紅茶という表現がふさわしい。

本物の金駿眉とは?

福建省政府の基準により武夷山風景区から50kmほど離れた桐木村(桐木関)を中心とした武夷山国家級重点自然保護区内565平方キロ内に存在する茶園の茶樹から採取された単芽を使用して茶葉を使用して燻香や着香はなし、すなわち無煙(煙味なし無燻)一芯(単芽のみ)で作られた正山小種紅茶ということになっている。正山小種であるということは、実生の在来種(奇種)の茶樹から採茶されていなければならない。

  • 2020年4月に中国語の百科事典や情報収集した際には海抜1000m以上という表記が存在したが2021年2月に綺麗に消えて、近年に1000m以下でも可能と改正された。もちろん1000m以下の原料を使用して混ぜていても、海抜が700m程度の製品でも詳しい専門家と一部のマニア以外は試飲で鑑定することは難しい。ちなみに愛好家や茶商たちは、ほかの高級中国茶と同様に余韻や高山茶特有の味などを識別して価値を決めているようだ。

すなわち・本物の金駿眉は桐木関産であり、標高は桐木関の平均海抜である約800m前後以上かつ、桐木関自然保護区内産の芽のみを使用した(芽紅茶)であるという認識で良いだろう、しかしながら、実際にそうでなくとも(この金駿眉は桐木関の標高1300m以上の新芽を利用して、、、)などの説明を書くことは簡単にできる、仮に説明通りの条件を満たしていても品質が良いかは別問題。

完成したての一番摘みの金駿眉
金駿眉の値段 参考現地価格情報 

1中国元は22日本円で換算 500グラム(一斤) ※元の価格は2020年時点の情報であり、2024年4月、現在は元建てにて、人件費高騰から値段がそのままの場合でも中身の改悪などにより2020年よりも平均15−25%上昇しており、円建てでは2021年−2024年にかけて、円安が拍車をかけて毎年2割程度も値段が上り、茶葉原価のみで4年間の間に円建てでは5−8割程度も値段が上がりました。

  • 正山堂の特級金駿眉 一缶100g2560-1960元500g9800元 1中国元22日本円換算(56320円-21万5600円)
  • 中国の市中で量り売りで見かける金駿眉の値段500g400-1800元(8800円-39600円)  
  • 金駿眉(桐木関産)7000-20000元 (15.4万円~44万円)
  • 桐木関周辺の標高1000m以下の低い物 500g2500-4000元(55000~88000円)
  • この記事で紹介している桐木関金駿眉500g13300元(29.3万円) 

★現地での値段は農家直売の場合と卸商を通す場合と値段は大きく異なる。2020年当時の価格であり2024年では元建てにて、2割程度高くなっている。

複数の専門店の店主や現地の卸商と商社に2019年から2020年にかけて私が聞き込んだ情報から逆算すると、日本における正山小種など福建省産紅茶の原価率は関税が安価である等の理由から、一般的な物で原価率は25%~10%・金駿眉を含む良質な正山小種は35%~15%であるようだ。

税金が高く、税関の壁と製品の特性から流通過程に手間がかかる為に原価率が低くなりがちな中国茶全般から見れば原価率の相場が高いため、国内でも良い物が比較的多く流通していることが納得できた。

世界的に高額な紅茶

元祖メーカー正山堂の品物や少量生産の金駿眉は100g3.3万円~4.4万円という値段で毎年発売されており、メーカー品は中国においては普通にネット通販で購入できるという割と知られたコンテスト入賞品などでなく常時売られている通常商品の紅茶であり、通常と考えるとおそらく世界一か世界の上位に位置する高単価(価格が高い)の紅茶だと思われます。

パッケージ表記(スペック)が良い=品質が高い・美味しい(味)ではない。スペックが良くとも二番茶や混ぜ物そして肥料過多による品質下落という問題は絶えず付きまとう。ということで高額だが元祖メーカーを買えばよいのでは?という話になるのだが、大量生産品であるという事実がそこには付属しており、大量生産=味が良いという保証もない為、愛好家は本物=高品質の少量生産を求めてオーダーを入れるようだ。

金駿眉ができるまで 

茶摘みから自宅までの記録

そんな金駿眉だからこそ、コロナで外出制限となり巣ごもり消費の今だから、桐木関で金駿眉を製作中の葉老師と実際にリアルタイムで連絡をとりつつ茶摘みから完成そして、国内へ輸送されて、わたしが本物の金駿眉にありつき飲むまでを実際の動画を交えて記録します。ちなみに金駿眉は私が今まで購入した中でトップクラスに単価の高い茶に間違いありません。時間は中国時間で記録しています。

金駿眉の製作・日光萎凋

なんとか茶摘みへ

日本ではコロナ騒動の真っただ中でも中国武夷山では、なんとか落ち着きを取り戻して、正山小種の収穫が始まりました。茶摘みの様子から選別に至るまでのプロセスでの手間は想像を絶する物です。以下で紹介している一連の製茶工程を見るとわかりますが金駿眉は手間がかかっており、単価が高額なのは当然であると思います。

桐木関における茶園の様子

こちらが茶園の様子・桐木関の1200m前後の茶園だ、極小の新芽は金駿眉へあえて半分ほど摘みをしていて、残りが成長したら銀駿眉(野生紅茶)になります。(次に出てくる新芽ではないので二番茶ではない)

早朝の桐木村の茶園の様子 これから金駿眉になる新芽を収穫します。

ちなみに、動画や説明に挿入されている竹林山とは茶樹の成育環境のことです。

茶摘み 2020年4月12日 

金駿眉で使うのは新芽のみ・極少の新芽のみを摘み取ります!

中国語の説明・桐木关野生金骏眉采摘进行中。喜欢的朋友可以预定了。

桐木関にて金駿眉の茶摘みを行っています。

こんなに小さい新芽のみを茶摘みしています。

新芽の分別 午後5時

茶摘みを終えて、新芽の選別を職人さんがしている様子です。

(芽头采摘到家后去除杂叶碎片)

形の悪い新芽や少し成長してしまった新芽は除去します。

金駿眉になる紅茶の新芽のピッキング作業

このような地道な選別作業は、夜8時まで続きます。

振るい落された新芽

極小の新芽を収穫するだけでなく、春に最初に出てきた最高の新芽をさらに選別するのです。

厳選された正山小種の最初の新芽 

まさしく選ばれ、振るい落されずに残った春一番で新芽のみが、最高峰の紅茶である金駿眉へとなるのです。

萎凋 午後20時40分

金駿眉の室内萎凋

選別を終えて萎凋を行っています。

この作業は放置しているのではなく、完成後の香りを左右する重要な作業です。

  • 日光萎凋 4月13日午前7時ごろ

一晩の室内萎凋を終えて、日光に晒して発酵させます。

揉捻 午前11時ごろ

萎凋を終えて揉捻をします、マシーンで新芽を揉んで発酵を促します。

発酵

揉捻を終えていよいよ発酵させます。

発酵開始 11時30分ごろ

発酵工程を行い、1時間ほどで見た目が綺麗になってきました。

  • 試飲 午後4時ごろ

発酵3時間で試飲、発酵がまだ足りておらず、この時はちょっとだけ、渋みがあるらしい。そのあと3時間発酵させた。

発酵止め

発酵4時間にて発酵を終えて、発酵止め(乾燥)をはじめる。

この日は昼間の気温が温かかったので、発酵が早く進んだようです。

完成 桐木野生金駿眉 御茶荘 2020

2020年4月13日 午後7時ごろに完成しました!

5人で茶摘みをして、完成したのは・・・・全部で595g(1.19斤)

この記録で見るとわかるのだが、職人さんたちの労力と手間を考えると、高額かつ希少な茶であることには疑いの余地はないと思われる。完成した茶葉の量は少なく希少だ、中国国内に正真正銘の桐木の金駿眉が溢れるとは考えにくい。

金駿眉の茶葉
金駿眉 2020の茶葉 撮影 2020-6-14日

誕生したばかりの正真正銘の金駿眉 

去年は予約分で完売してしまったらしい。

金駿眉にはランクが多数あり、標高や混ぜ物などでも差がある、これより安価な金駿眉もあり高価な金駿眉も存在する。

私たちが町で目にする黄金色の金駿眉とは見た目が異なるイメージ

葉さんには製茶の様子を送っていただき感謝です。

希少なお茶ということを留意して飲みたいお茶ですね!

日本到着 試飲

2020年6月13日 無事に玄関先へ到着して翌日に試飲した

茶葉そのものからの香りでも重厚な香が漂っている、茶葉は硬く身が締まっている、新芽のみの為1gでも芽がふくれており、ふわりとした見た目、お湯を注ぐと無煙の正山小種らしい焼き芋とフルーツと竜眼の香りが出ているがその香りの密度が高い。

洗茶の後の様子

洗茶も試飲して5煎ほど飲んでみた。(1煎は50mlほど)

口に含んだ瞬間の強くても優しい明確な余韻に感動、味は桐木関正山小種(無煙・無燻)の銀駿眉や小赤甘と割と似た味わいを感じるのだが、口の中で感じられるそのの味わいは透明感が強く、一言で言えばキレが強烈。

  • 茶液の密度とミネラルの凝縮感は体験したことのないレベル、高級な正山小種紅茶をキレイにして、味わいを3倍程度に凝縮したかのようなお茶である。
  • 香り・やや竜眼方向でミネラル感が半端ではない、香まで凝縮されている。 透明感・凝縮感・余韻の強さ・キレ共にまったくの異次元であった。
  • 余韻(コク)の強さは飲んだら上半身に圧し掛かる強烈なコクと後味の長さは最長である。
  • コクの強さでは各種の単株茶と同レベル、伸びは同じ程度だが周りかたは単株は優しく強い、こちらは強烈

0.95gで15煎も余韻と香味かなり安定して維持され冷めた時の味わいも別格、この茶は味を味わう茶というより、口と全身で茶液の重さと密度を感じる茶だと思う、感じようと思わなくてもその余韻の強さはわかる。最終的に約1gで極薄であれば20煎も飲むことができ、かつ密度を感じる異次元の紅茶だと思う、マニアとしてこの値段なら大いに追加で買いたい、そして飲みたい茶・・・これから追加できるか交渉する。

金駿眉のオススメの飲み方

  • 使用する茶葉は4~5粒のみ 茶葉の重さは0.05gほど
  • カップに茶葉を投入して、余熱せずにそのまま熱湯を注ぐ(湯量は適当でよい)
  • 茶葉に直接熱湯をたてないようにするとなお良い
  • カップの温度で熱湯の温度は下がるため、実質70度程度となり新芽の繊細な香味が引き出せる
  • 適度に色が出てきたら飲みごろ、この場合は所要時間は5分程度
  • 飲んだあとの状況次第では二煎目~三煎目も楽しむことができる。

あまりの美味しさに追加注文してしまった・・・金駿眉の強い余韻と奥深さを体験するには茶葉を極少で飲んでみることをお勧めする。

2024年 金駿眉の販売と最新情報はこちら

桐木紅茶 金駿眉(老欉金駿眉)

海抜平均1000mの正山小種奇種の老欉から、最初に出てきた頂芽のみを使った桐木単芽紅茶金駿眉。

2023年産 武夷山国家公園桐木自然保護区桐木村、標高900-1100m、平均1000m、樹齢60年以上、無農薬無肥料、栽培かつ奇種(野生種)茶樹のみを使用。通常は茶商のもとで、海抜1200m以上の野生金駿眉とみなされる商品。

2024年 高級金駿眉を発売

2024年新茶の高級金駿眉製品2種類の予約を受付中です、こちら記事で紹介している桐木単芽野生紅茶金駿眉は、予備が出た場合に僅かにネットショップで並べますが、基本的に予約販売専用となっております。

販売価格 5グラム2600円 

Just a moment...

武夷紅茶 金駿眉(老樹金駿眉)

武夷という名称ながら、武夷山国家公園、桐木村海抜700-900m付近の正山小種奇種の老樹から、最初に出てきた頂芽のみを使った金駿眉。

価格 5グラム1680円

15グラム円

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2023年 金駿眉の情報

2023年の金駿眉の製茶についてはこちらから

武夷岩茶および正山小種の購入はこちら

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正山小種・桐木紅茶
中国産の紅茶のひとつ福建省産の正山小種と桐木紅茶などの関連のカテゴリーです。

2022年9月27日 更新

表記している為替レートを見直しました。

1元16円→20円、2024年4月27日為替レートを見直しました、1元20円→22円。

コメント

  1. […] […]

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