野生茶とは?
茶(チャノキ)の原産地である中国西南部すなわち雲南省の山岳地帯にある原生林に何百年千年以上も自生する野生の茶樹から少数民族のハンターにより採集された茶というのが野生茶である。要するに人の手がかかっていない、山に自生する山菜であり、高品質の自然食材でもあり、自然そのものであり何を取っても自然派茶の頂点だろう。屋久島の屋久杉の大木が生息するような数千年以上も安定した森からの贈り物ともとらえることができる。
プーアル茶における野生茶の表記は珍しい物ではないが、一般的には原生林における自生の茶樹から採集された物でなく、基本的に遠い昔に誰かの手によって植えられ、何百年と放置された野放大樹と表記されるべきで中国においてもそのような表記改められている。すなわち放置された茶園における古樹の茶であることはこの茶の発売元であるHOJOのブログなど中国茶愛好家目線のサイトでは良く記述されており、中国でも同様な内容は多く愛好家に周知されてきている。もちろん野生とほど遠い普通の茶園産の物にも野生の二文字を冠することは中国茶の世界では珍しくはない。野放大樹と野生の区別が浸透する以前はプーアル茶専門店では原生茶や原生野生茶等の表記により、このような茶が販売されていた。詳しい説明は省略するが大樹も古樹も樹齢数百年の茶樹を意味する。
大雪山野生茶
チャノキの原産地である雲南省南西部臨滄にある大雪山に自生する茶樹から採集された野生茶・2011年頃から日本で野生茶を最初にブログやホームページで紹介して大大的に売り始めたHOJOの商品・全般的に共通する風味に関して感想を書けば風味や香気には繊細である奥ゆかしくさと分かりやすい芳香に加え、飲めば強烈な飲み心地が特徴である。繊細さと強烈さを両立している中国茶という印象なのだ。強烈さとは口当たりや回甘、体感、後味など中国茶におけるコク(余韻)全ての要素において強烈なのだ。標高は2000以上と説明されており当然ながら高山を冠してないのだが高山茶にも含まれるだろう。
すべて茶葉3gにて評価と記録
2020 餅茶
洗茶をすると桜餅を連想する香りが広がる、茶杯からの匂うアロマは咲きたての桜の花を連想する、数多くの茶の匂いを感じて来たがこれは初めてである。口に含むと率直で高山茶らしい透明感ある印象、フレーバーでは上記に加え洋梨や熟したリンゴをも感じる。後味での美味しさは天然のキノコスープを連想する、山菜の美味しさや野生味が豊かで茶というより食事という印象を受けた。
現在の味わいは口当たりの鋭さと透明感からクマリンのフレーバーを楽しむポーランドの伝統型フレーバーウォッカ(ズロッカ)に似た印象を受けつつも、2000m以上で採茶される高級な中国茶らしい雰囲気が印象的だ。新茶の鮮烈な様相から熟成茶への変移期であろうと推測される時期ながらも味気が無いのではなく、強く気品がある味わいだ。
味わいの変化
この茶を2019年10月頃に飲んだ際には山菜の風味と鋭く解像度の高い透明感と栽培茶を打破するかのような強硬な飲み心地に加え、味には野生味的な痺れ(刺味とも)があったが、当時と比較するとそれらはおとなしくなり柔らかく穏やかな印象を受ける、今後は今より少し柔らかくなり香気は桜、香味はフルーツという具合に熟成すると思われる。真空パックから初めて開封で飲んだ際においては、今でも上記のようなインパクトを受けるかもしれないが、個人的には初期の状態も春先に採集した山菜を直後に食すような印象でそれはそれで感動したが、お茶らしく香り深くなった現在の状態は嬉しく愛着が出る。
白茶のように初期は色が薄く、熱がかかり煎が進むと茶液における色合いは濃くなっているが、風味が濃くなっている訳でない。味わい均等化の為に茶海を利用しても、何煎目変化を楽しむのも面白いが、味わいでは前者が優れていると感じる。
2018 餅茶
洗茶二回 少々高香に似た香りとトップノートが周囲に広がる。 アロマではチェリーあんずを連想する果実香とプーアル生茶らしい草の香り、口に含むとズッシリと強い飲み応えでアロマには上記のフルーツ感に加え小豆や餡を感じる。余韻は強く、後味も長い。
餅茶らしい透明感ある味わいと熟成で現れ3ヶ月前では感じられなかった小豆と餡の香味が素晴らしい。洗茶のときには高香を感じたが、淹れ出したら消えて茶葉本来の味わいとなったことが製茶技術の高さが伺えた。筆記2020年1月8日
2017 散茶
茶葉3g 茶葉そのものからの香りはさくらんぼを連想する果実香お湯を注ぐとそのまま周囲に香る、茶杯から感じるアロマは上記に加えやや緑茶のような煎った香り、口に含むと引き締った感じでの口当たり良さとの高い透明感においても秀でた解像度が特徴、香味、後味はほぼ同様。
2015 餅茶
茶葉3g 洗茶二回、アロマでは軽く炒り豆連想する高香が香る、口に含むと高山茶らしい締まりのある感覚に加え強い透明感を感じる、香味ではチェリー連想する果実香、後味では甘さが残る、香味と後味の甘さが混合して、高級なチョコレートを連想する。余韻は肩付近までと強いが、ほかの年号のHOJOの野生茶と比較すると弱い。そしてこの基準内の茶のなかで唯一軽く渋みを感じた。
満足感がありすぎて敬遠した
私は初めてこの茶を飲んだのは2018年の冬だったこと覚えている、その強い口感と後味に加えて魅力的なチェリーを連想するアロマにうっとりした。しかしながら、その強烈で満足な飲み心地を持つこの茶を多く購入してしまえば、一般的な大樹茶や古樹茶とされるプーアル生茶が物足りなくなってしまい、その満足感から中国茶そのものに対して探求欲が削がれる可能性があった為に50gだけの購入に抑えて、ほかのプーアル茶を数キロ購入した。やはり良質な古樹生茶を一定程度は飲んで学習してから野生茶について感想を述べることにしようと後回しにした。そしてそれから二年が経過して何十種類という古樹生茶や古樹茶を飲んでそろそろ良いだろうと自己解禁したのだ。
まとめ
全般的に標高の高いお茶が持つ特有の引き締め感と高い透明感が特徴だ、2018年以降から余韻が強くなったていたり、豊潤感が強くなっていることや、茶葉の見た目などさまざまな観点から新しい物ほど品質が著しく向上していることが飲み比べると良くわかる。
外的な影響を受けにくい独特の安定性
大雪山野生茶の全般的な特性として淹れる茶器や水質に左右されにくい独特の安定性があると三年以上愛飲して感じている。烏龍茶等の高級茶で見られる、淹れる環境により大きく味わいが変わるという印象はなく、割といい加減に淹れても、茶を淹れる環境に左右されても、味は安定して美味しいのが特徴であり持ち歩きに重宝している。
唯一無二の透明感と飲み心地
どこか烏龍茶のような飲み心地を感じつつ、透明感、独特の引き締め感、茶液の濃密さ、後味における持続時間においてほかのプーアル茶はおろか、同じ雲南省産の野生茶以外とは比較にならないほど良く、唯一無二の雰囲気に加え、それらの価値観の高さに加えて値段は高くとも50g2000円ほどであり、茶葉を大量で利用しない限りは50gあれば10回以上は楽しめることからコストパフォーマンスが高いのも特徴だ。総合的なオススメ度は特に高い。
大雪山野生白茶
大雪山野生茶の白茶版、原生林に自生する野生茶樹齢から採集された茶葉を白茶に製茶した物。
全般的な感想としてはプーアル茶版と比較すると口当たりや後味の(ふくよかさ)と(柔らかさ)などが秀でている。加工されている感じは受けるのだが、熱があまり加わってないからか、自然体な豊潤感が素晴らしい。低温で淹れた際の美しさは白茶のなかでも驚きの良さ。
2020 散茶
茶葉は3.5グラム使用しての感想・茶葉からは美味しそうなミネラルの香りが漂う。
アロマからの匂いはスパイシーな山野草を連想する香りが漂う、口に含むと柔らかくまったりとした口当たり、フレーバーでは高級野生キノコや山開きしたての登山道の脇に、春遅くに芽吹いた高山植物の新芽の香りが口の中でも漂う、後味ではスミレやアザミを連想する花の香りも感じられた。余韻は上半身の染み渡り強い、飲み心地はこの記事で記録した野生茶のなかにおいて引き締め感は強く無いが、その代わりに口の中で感じられる広がりが大きくミネラル感が素晴らしい。
良い意味でお茶という枠組みを超えて、料亭や旅館で提供されるキノコや山菜料理のスープという印象だ。健康茶のような印象も受けるが、美味しさが強くもはや一線を越えた超級の中国白茶というイメージで茶としても成立している。
2018 散茶
茶葉は3.5グラムを使用、茶杯から香るアロマは透明感が素晴らしく、早朝の登山道を連想するような清々しい香りであり、杉の葉や高山植物というイメージだ、口に含むとミディアムボディながら強い口当たりで舌触りが素晴らしくエキスの密度が高く感じられる。
飲んだ際の味は山菜らしい香味だが、喉を通過した際にはアザミを連想する花香が感じられた。後味には鹹(しおはゆさ)を感じる強いミネラルを感じながら、例えるなら春先に野山で採集したゼンマイやコシアブラの美味しさと高級オリーブオイルを連想する味わいが長く残った。余韻は喉付近(喉韻)と背中に周りとても強い。
2017 餅茶
茶杯からのアロマは乾いたアザミ、パチュリ、紫陽花など紫色の花を連想する香りに加え、野生茶らしいチェリーやキイチゴ、ラズベリーを連想する果実の香りも備えている。口に含むと引き締め感に加えて餅茶らしい水質を感じる。
茶液が口の中を通過した際に感じる味やフレーバー恐ろしく透明である、喉を通過した際に感じる余韻はすこぶる強い(喉韻)後味においては感度の高い甘さが(しっかり)と感じられ、15種類ハーブティーのような豊かな味が口の中に長く残りつつ、烏龍茶とは違うフルーツ香りが残る、フルーツ香が後退してそのあとはアロマと同じ紫色の花を連想する花の香りがさらに続いた。コクは肩付近にドッシリ残り強い。
2017 散茶
茶葉3.5グラム 茶杯から香るアロマには椎茸や野生キノコを連想するお茶というより調理されたスープのような美味しそうな香り次にミネラルを感じる。
口に含むと、高山茶らしい引き締めのある口あたりに加え、透明感が強いが驚くべきはその味の良さ、強烈なミネラルの美味しさ、舌の上で感じる(大自然の旨味)が最強クラス、昆布と椎茸に鰹節を用いて抽出した(だし汁)を連想する強烈な美味しさであり、もはやお茶ではなく熟成された山菜スープ?植物性のだし汁と言いきる。
余韻(コク)は肩付近までと他の野生茶と比べると強くないが、後味に残る味の強さは最強、後味が強すぎて余韻がわからなくなっているかもしれない。ちなみに後味も余韻のうちに入るので素晴らしい。
まとめ
大雪山野生白茶はすべて味わい深く、絶品の茶であり、蒸れ味等の白茶特有の雑味や茶葉本来の風味を損なう味わいは一切無く、良い意味において熱や人の手が加わった感じが少なく、原生林から採集された山菜を茶として淹れることで調理して食べていることが実感できる。個人的には野生食材としても最高評価。
野生白芽
こちらも大雪山産の野生茶、こちらは普通のチャノキ(カメリアシネンシス)とは異なる品種のようだ。茶葉3グラム 茶杯からのアロマは山野草を連想するミネラルの香り、雨あがりの森に漂う香りに近い、口に含むと滑らかでもしっかりと引き締めのある舌触り、喉を通過すると後味となり白茶らしい甘さが口の中にしっかりと残る。
コクが独特で上質な液体という印象を受け、飲んだ後に身体が軽くなるという特徴があった。野生白芽は白茶らしい上質な味わいであり白茶が好きな人と割りと上級者向けという印象をうけた。個人的には独特のコクが好みで食事中に飲んでいる。
緬境野生茶
中国雲南省とミャンマーの国境地帯で産したという緬境野生茶は山菜の美味しさ、俗に言う山菜の味わい野性味と広東省など倉庫熟成のような陳年プーアル生茶が持つ甘さと奥行き、という二つの美味しさを持ち合わせた正統派のプーアル生茶だった。口当たりが良く、後味に花の香りが長く残る、大雪山野生茶とは茶葉の品種が大きく異なっている点を加味しても野生茶のエネルギッシュな味わいは共通するが、こちらのほうがプーアル茶らしい感覚は強い。なおミャンマーは中国語で緬甸という為、中緬国境地帯で産した野生の茶=緬境野生茶という名称だと思われる。
茶葉2.5グラムを使用して、HOJOの蓋碗を利用した工夫式で淹れた。洗茶は二回、煎茶をしている時の匂いはプーアル陳茶で良く感じるほこりのような匂い。洗ったあとの一煎目に茶が目覚め、口当たりはやわらかくまろやか、香りは甘い完熟フルーツや野草の香り、余韻が強い。二煎目、プーアル生茶らしいドライな感覚と茶杯から胃までの直通感覚、スルリと入る流れが素晴らしい。
三~四煎目、少し時間を長め、強いピリピリとした山菜を連想するビリビリした美味しさ、プーアル生茶に現れる刺の味わい、プーアル茶用語で稀に出てくる刺味が出現した、強いビリビリした旬の野草や山菜の特別な味わい、このワイルドさ、がたまらない山菜の(野生味)そのままだ。
五煎目~六煎目、強く野生的な美味しさにより、口の中が刺激され、喉から戻る甘さで満足、七煎目以降は味香りが薄くなっていくが満足感は維持された。
私がHOJO代表である北城彰氏の説明を聞いたところ、中国雲南省臨倉とミャンマーの国境付近で採集された茶で臨倉と接するミャンマーの州はカチン州であり政情不安の地域だ、雲南省とミャンマーの国境は長く、西双版納の布朗山などの南部までミャンマーとの国境を接しており、北城氏はたいへんな思いをして入手したようだ。この茶を発売した頃は中緬国境には現在のように国境地帯に中国側が設置している柵や有刺鉄線など無い時代であり、地元民は事実上は自由に行き来していた時代だからこそ入手できたお茶であったのかと思った。筆記日時2020年6月26日
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